ペイントビズ(PAINTBIZ)

サビ 亜鉛いっぱい塗料→高耐候めっき塗料 前編

昔の単管パイプは錆びた

前頁の動画では、鉄と亜鉛を接触させ、亜鉛を意図的に腐食、犠牲にして、鉄を守る方法を行っている。

この手法は旧来から船舶やボート等の腐食(サビ)を防ぐ方法でも使われ、正式には「防蝕亜鉛」という。

写真:PB二見 協力:㈱舵社

上の写真は、船外機のプロペラの上、中央上部には四角いジンクと呼ばれる亜鉛の塊が設置されている。
亜鉛製のものは通称ジンクといい、亜鉛以外のモノは当然ジンクとは言わず、陽極という意味でアノードという。
※アノード(電流が流れ込む電極のこと)

船の場合は、様々なパーツの集合体のため、各パーツ毎に色々なアノードが設置され、アノードが朽ちることで金属部品を腐食から守っている。

建築物にもこの原理を利用して、水が頻繁にかかる工場のプラントや港湾の波止場やターミナルの海面より下にある鉄柱などにもアノードが設置されている。
定期的な交換の際は、ダイバーが水中工事を行いジンクを交換している。
(2021年現在では電食の原理を利用し、リアルの電気を通電させてサビを防いでいる事がスタンダードになりつつある。)

これと同じようにジンクリッチペイントでは、樹脂の比率よりもジンクを豊富(リッチ)に配合し、塗料内のジンク同士と素地を通電できる状態にすることで、素地の鉄を腐食させない塗料というわけだ。

因みに国内では、1950年代から旧三井金属塗料化学(現日本ペイント防食コーティングス㈱)より「ジンキー」の商品名でジンクリッチペイントは発売され、70年近い超ロングセラーな塗料もある。

さて、亜鉛、亜鉛と何度も連呼したが、この亜鉛を炉で焼くと酸化亜鉛(亜鉛華)になる。
おや?どこかの会社が日本最初の亜鉛華(酸化亜鉛)を製造したような…

話しがそれたが、ここからが重要だ。

建築では屋根や様々な建築鋼材に、以前は「溶融亜鉛めっき」が施されていた製品が使われていた。

溶融亜鉛めっき(以後:亜鉛めっき)は防食めっきの一種で、亜鉛を犠牲にすることで鉄を守る金属表面処理の方法。
※亜鉛めっきは「電気亜鉛めっき」とは違うもの。またその上からクロメート処理をしたユニクロめっきとも異なる。
因みにファストファッションのユニクロよりも、ユニクロめっきのほうが先に呼称として使われていた。

上で説明した亜鉛と鉄との関係と、だいたい同じ感じだ。

亜鉛めっき板のことを指してトタン板と呼ぶ。そしてトタン屋根は錆びるのはご存知のとおり。
それは亜鉛めっきが腐食することで溶けきってしまい、防食の効果がなくなってしまうからだ。

そして、昔の単管パイプも良く錆びた。ここにも「亜鉛めっき」が使われていた。

でも今の2021年現在では足場はあまり錆びていない。実はこれには大きな理由がある。

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二見勇治

著者:二見勇治 Futami Yuji

建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。