ペイントビズ(PAINTBIZ)

サビ 亜鉛いっぱい塗料→高耐候めっき塗料 前編

敵を知り、己を知る。

塗装は腐食に対する戦いだ。

特に鉄の腐食は塗装屋にとって頭が痛い。
しかし、その腐食のメカニズムも分かってしまえば、戦いも余裕だろう。

孫子の兵法では「彼(敵)を知り、己を知れば、百戦殆(あや)うからず」という、名言がある。
敵であるサビ(敵)の仕組みを分かれば、負けない塗装が出来る。

但し、敵を知るには己(下地)を知る必要があり、他人を知るよりも自分を知るほうが遥かに難解だ。

今回の記事では「高耐候めっき用塗料」を紹介したい。

その前に、ジンクリッチペイントの概要を解説したい。
でも、「ジンクリッチ」ってナニ?という人もいるかもしれないので、超入門的な事から進めていこう。

ジンクリッチペイントとは

ジンク・リッチは「ジンク」と「リッチ」の二つの単語からなる言葉。

ジンク=亜鉛。元素記号は、Zn。
リッチ=豊富。お金持ちの「リッチメン(Richman)」のリッチ。

つまり、「ジンク・リッチ・ペイント」=「亜鉛・いっぱい・塗料」という直訳になる。

亜鉛がいっぱいならば何か健康になりそうな感じはするが、あくまでも塗料の含有物の話しであって、男性ホルモンとかは関係ない。

話しがそれたついでに、参考にするのであれば技術情報のサイト、技術情報館SEKIGINの腐食概論(リンクが切れたら縁が無かったとあきらめよう)に訪問するのも良いだろう。
上記のサイトは比較的分かりやすく構成していて、尚且つ論文などの出典も記載され正確性が高いサイトだ。

このリンクは、サイト運営者情報が無かったのだが、筆者の調査で「某研究所の元研究者」だということが分かり、あらためて情報の信憑性が高まった。
サイトでは意図的に運営者情報を載せいていないことを尊重し、当記事でもそちらにはタッチしない。

話が2回もそれてしまったので、元に戻す。

では防食塗料とサビ止め塗料は何が違うのだろうか?

考え方としては、「バリア防食」と「犠牲防食」の違いだ。

バリア防食とは、金属面を完全に覆い、バリアして酸素や水分から金属素地を守る方法。

犠牲防食とは、鉄(守りたい金属)よりも腐食しやすい金属を塗料内に大量に含有させ、塗料側を意図的に犠牲にして腐食させ、金属素地を守る方法だ。

上記二つをミックスさせた方法が、現在の防食塗装の大まかな概念になる。

区分けについての考え方は以下を参考にして欲しい。

塗装によって鋼材表面に生成する塗膜の防食機構は二種類であり,「バリア防食」,「防錆顔料等による化学的な防食」と大別できる。

バリア防食はおもに塗膜中のバインダーが,腐食因子となる酸素・水分等を遮断することで錆の発生を防ぐ機能である。また,一般的な塗膜には防錆顔料が含まれており,その機能はさまざまであるが3),その中でもジンクリッチペイントに含まれる亜鉛は犠牲防食作用を示すため,特異である。図-1に示すように,亜鉛は基材の鉄と比べて卑な電位であるために腐食因子である水と反応しやすい。
また,反応によって生じる亜鉛化合物によって緻密な酸化被膜を形成するため,腐食因子をバリアすることもできる。

以上から,ジンクリッチペイントは犠牲防食とバリア防食の二つの効果によって防食性を発現していると言える。

引用:色材協会誌 2015年発行 88巻2号 P51-55 関西ペイント㈱ 水島健太郎著

また、以前のペイントビズの記事、建築塗装 サビのメカニズムでも解説を行っているので、こちらも是非参考にして欲しい。

今回の記事では「犠牲防食」を取り上げるため、塗料では無いものの分かりやすい動画があった。そちらを参考にしていただき、亜鉛と鉄について先ずは知ってもらいたい。

旧車好きならば知っている人もいるかもしれない。「京都はんなりチャンネル」の斎藤商会さんのYouTube。
車屋さんと、塗料との関係が一見無いように見えるが、防食塗料の概念を知れる動画だ。

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二見勇治

著者:二見勇治 Futami Yuji

建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。