塗装道具探求 皮スキメーカー Vol.2
皮スキの価格
今回は皮スキを取り上げたが、スクレーパーの区分け、解釈が難しかった。
実際メーカーでも、皮スキをスクレーパーと表示しているところや「ヘラ」として取り扱っている会社もあり、皮スキへのカテゴライズがあやふやだと分かった。
また、自社内で製品を作っているメーカーなのか、買ってきた物の名前だけ変えて「自社製品」と謳う会社なのか、その事業者としての姿勢の曖昧さが強く感じられた。
塗装工事会社で「自社施工」をうたいながら、丸投げするのと同じではないだろうか?※丸投げは建築業法の法令違反。
昨今、塗料ですらも企画・販売会社であっても「メーカー」と自称する会社もある。
「企画を作っている」からメーカーで間違いないが製品は作っていない。
こういった部分が最終消費者には分かりにくく、しいては不透明さに繋がるように思う。
更に今回の企画で一番強く感じたことは、「皮スキの価格が安すぎる」事だ。塗装工事従事者の必須工具でありながら、ほとんどが1000円以内で買えてしまう。
これでは製造元が問屋へ売る価格は、100円台の可能性もある。
使用頻度と耐久性を考慮して、クオリティーが良ければ、皮スキの価格は3000円でも高くは無い。
それなりの価格ならば、塗装屋も道具に対してプライドを持てるのではないだろうか?
また、この記事を作るにあたり、塗装工事の道具を調べていたら、ある刃物がヒットした。
「塗師屋包丁」。
画像引用:鹿田喜造漆店 塗師屋包丁
小刀のように見えるが先端が角ばり、その部分にも刃が付いている。
筆者が子供時代、実家の塗装屋で作業場を悪戯していた頃、工具入れの中でこの刃物を何度も見た記憶がある。
昔現場での一服中。親父が教えてくれたことがあった。
職人の父親曰く、
「昔(昭和30年代)はペンキ屋全員が小刀みたいの持っててさ、中には刃渡りが1尺くらいあるのを持っている奴もいて、それで道具とか作ってたんだ。」
「あと、時々喧嘩になると、お互いそれを抜いたりして(笑)」
怖い話で笑い事ではないが、上記のような小刀を使っていた時代もあったようだ。
しかし、今の職人はほとんど使っていない。こういった事がロストテクノロジーに繋がるのではないだろうか。
最後になるが、今回ご紹介出来なかったメーカーもある。
例えば、岐阜県関市の株式会社清水刃物工業所、同じエリアの林刃物株式会社だ。
写真:左端 株式会社清水刃物工業所 スターリバー(PB二見私物)
ネットに情報が少なく取り上げることができなかった。
今後はこういったメーカーも記事化できるように努めたい。
今回の「塗装道具探求 皮スキメーカー」では、皮スキメーカーを地域の特性と合わせご紹介したが、塗装道具にはこれ以上にディープな世界が広がっている。
更なる追求をするべく、常に研鑽が欠かせないことを強く感じた。
©︎PaintBiz By 二見勇治
著者:二見勇治 Futami Yuji
建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。