電磁波の塗料
昨今、様々な機能性塗料が発売され、建築塗装では遮熱、断熱、防藻、防カビ、防火、防汚、塗料などがある。
最近では新型コロナウイルスによって、耐ウイルス、抗菌塗料へ注目も非常に高まった。
それら機能性塗料の中に「電磁波シールド塗料」なるものがある。
この塗料は建築塗料のカテゴリーではなく、電化製品や電子機器用などの工業用塗料のジャンルだ。
電磁波シールド塗料の目的は、従来電子機器のハウジング(外殻)は金属製品が多かったものの、現在ではプラスティック製品が主要になり、それによって電磁波が素通りしてシールド効果が無くなる。そして周辺機器へ誤作動を起こす要因になってしまう。
その対策として、電磁波のシールドを塗膜で作り出す塗料が「電磁波シールド塗料」というわけだ。
電磁波シールド塗料
SF好きなら、痺れるネーミングの代物。
しかし、「電波と電磁波って何が違うの?」と、お思いの読者へ少しだけ電磁波について説明したい。
分かりやすい図があったので、こちらを引用して解説。
画像引用:総務省 電波と安全な暮らし
ザックリ言うと、電波も光も放射線も「電磁波」。
電磁波中の「電波」。こう考えるのが簡単だ。
また、温度が高いほど波長の短い電磁波を多量に出す。
この話しになると面倒くさいので「振動数の次元で広い連続スペクトル」とか、「双極子配列が生み出す電場」は今回はパス。
早い話が、「電磁波シールド塗料」は電波をシールド(防御)する塗料だ。
前のページで取り上げた「リレーアタック」も、金属製の箱でなくともプラスチックの箱に「電磁波シールド塗料」を塗れば原理的には電波を遮断できるかも。
江戸川合成株式会社という塗料メーカーから、エレアース(プラスチック・金属素地用塗料)という、「電磁波シールド塗料」が販売されている。
上記メーカー以外にも、製品塗料・工業用塗料の分野では、精密機器用の特殊塗料として電磁波シールド塗料が活躍している。
製品や精密機器の塗料では、結構メジャーなジャンルが「電磁波シールド塗料」だ。
ならば、室内の壁面に塗布すれば、どうなるのだろう?
外へ電波を漏らさず、なおかつ外からも電波が入ってこない。
でも窓があるなじゃいか?
心配無用。
窓ガラス用の「電磁波シールド窓フィルム」という製品や、遮熱フィルムの一種では金属層があるフィルムも効果がある。
3M社のサイトでもフィルムによる電磁波の関係が著されている。
遮熱性能を発現するために金属層を設けたフィルムは、日射のうちの可視光線から赤外線にわたって遮蔽するように設計しており、その結果として、幅広い領域にわたって電磁波も遮断するものがあるというのが実際のところです。
引用:3M™ スコッチティント™ ウインドウフィルム 通す?遮る?ウインドウフィルムと「電磁波」の関係
つまり、電磁波シールド塗料と電磁波シールド窓フィルムの組み合わせで、完全に電波を遮断する部屋の一丁上がり!
室内にWi-Fiが無ければ、スマホを持っていても、全ての電波は遮断され「虚無的な空間」が出来上がる。
しかしメリットとしては、隣人に自宅のWi-Fiを使われる心配が無くなる。
但し、高度情報化社会の昨今、外に情報を漏らさない技術も必要だ。
某サーバールームではこういった技術を取り入れ、無線による外部からのアクセスや内部からの発信を制御し情報漏えいを防いでいる。
更には思考盗聴だって防げるのではないだろうか?!
日頃、電磁波に悩まされている電波系の人には朗報だ。
アマゾンには「電磁波ヘッドキャップ」なる商品も販売され、そのコメントを読んだところ、複雑な心境に陥った。
某有名人もこの技術さえ知っていれば、電磁波攻撃から身を守れたのではないだろうか?
もしかすると「X-MAN」のミュータントの能力も、閉じ込められるかもしれない。
マグニートだって電磁波シールド塗料で施工した空間に囲まれていれば、鉄を操れなくなるかも。
さて、ここまでは電波を遮断する塗料を伝えた。
実は電磁波を遮断するのではなく、吸収する塗料もある。
その塗料の発展系として、兵器開発に使われたという塗料・塗装業界の都市伝説が存在する。
電波から見えなくする塗料、ステルス戦闘機の塗料技術を紹介したい。
次のページではその真偽を検証する。
著者:二見勇治 Futami Yuji
建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。