ペイントビズ(PAINTBIZ)

Vol.2 建築塗装のYouTubeは今

大規模系塗装におけるYouTubeの状況

最初から結論を出す。

大規模やマンション改修のYouTubeは順位としての評価が出来ない。
なぜならば、ほとんどまとまったチャンネルが無いからだ。

単発の動画ならそれなりにあるのだが、それでも動画1本の再生回数が極端に少ない。
動画の数やクオリティー、再生回数で考えるとまったく評価に値しないのが実情だ。

恐らく大規模系の塗装会社がYouTubeに対しての活用方法を見出していないからと、YouTubeを必要としていないきらいもある。

国内最大手の塗装会社、カシワバラ・コーポレーションですら公式チャンネルで1本の動画のみをアップしているだけで、TVCMの転載も無い。

更には長谷工リフォームですらも、個人が作ったかのようなチャンネルで、「本当にこれが長谷工リフォームのチャンネルなんだろうか?」と目を疑ってしまう。

恐らく、大規模系の会社がYouTubeを利用するには、ビジネスフローにおいて様々な制約があるからだろう。

例えば、施主・一次・二次・その次と縦割りによる契約の上に工事が行われ、一本の動画を作るにしても関係者との交渉や趣旨説明が必要になる。

また、大手が自社発の映像を制作する場合、会社のブランドとして、素人が作ったような動画は公表できない。
TVCMの転載をするにしても、広告代理店やキャストのプロダクションなどと別契約を結ばなければならず、そこにも費用が発生する。

因みに動画の制作費はピンキリだが、大手が自社のブランドに見合う映像制作を発注した場合、映像制作プロダクションに頼めば安くて60万円程から、TVCMともなると数千万円の費用にもなる。
個人の映像制作クリエイターに発注するにしても、尺や仕様によって制作費は違うのだが、15万円程から30万円程度(それ以上になる場合もある)が相場だ。(演者の費用は含まれない)
大手だとしても、そんな動画を何十本、何百本も制作できないだろう。

また、工事関連の撮影は日程調整が非常に難しい。
筆者もカメラマンで動画制作を行うため、その苦しみが良く分かる。

外注のカメラマンやディレクターは日毎のスケジュールで奔走しているなかで、工事会社の流動的な日程変更には対応が難しい。
もしも対応するのであれば、一定期間のウエイティング期間も費用に組み込まれ制作費は割高になってしまう。
しかも、一日で全てを撮影できるのではなく、実際の工事となると、1日数時間しか撮影の必要はない。

大手が自社発信を行う方法としては、自社内の広報部に動画制作部門を作り、内製するしかないだろう。

大規模系のYouTubeがこれほど何もやっていないのでは記事に出来ないため、追加で大手ゼネコンのYouTubeを紹介する。

先ずは大成建設のチャンネルだ。自社発の動画を公開し目を引いた。

大成のチャンネルは研究部門の動画が多く、建築のマニアなら見ていて飽きない。
しかしなぜか、例の新海誠監督によるアニメCMはミャンマー編の1本しかなく、シリーズで見たいところだがそれは叶わない。
恐らく代理店との間で公開の契約か何かがあり、買取の場合だと費用がとんでもなく高いのだろう。

更に大成建設のチャンネルは、YouTubeの機能を換わった使い方をしており「何故でこんな事するのか?」と、少し疑問を感じた。
チャンネル内の動画全てを子供向けコンテンツとして設定してあるのだ。
もしかしたら、コメントを入れさせないためか、広告を非表示にするためなのか理解に苦しむ。
(コメントも広告非表示も任意で出来るのだが・・・)

但し子供向けコンテンツとして動画を設定した場合、再生リストが作れない。
何かしらの防衛手段として、動画1本1本を子供向けコンテンツとして設定しているのだろう。
しかし、動画の本数は記事制作の2020年10月時点で25本程しかなく、本数的に少ない印象を受けた。

次に大林組のチャンネルを紹介する。こちらも動画の数は非常に少ない。

大林組のチャンネルは、設計本部のチャンネルとなっており、なぜか株式会社大林組のオフィシャルではない。
出来ることならスカイツリーの塗装などが見られれば良かったのだが、そういった塗装に関しての動画は皆無だ。
(今後スカイツリーの塗装に関しての記事を作る予定なので楽しみにして欲しい。既に素材は調達済みだ!)

その他、鹿島建設、竹中工務店にもオフィシャルチャンネルはあるが、どちらも内容は薄い。
清水建設にいたってはYouTubeのチャンネルすらない状況だ。

大手塗装会社、ゼネコン各社はYouTubeを上手く活用できていないどころか、活用する必要がないと判断しているのだろう。

以上が記事制作時2020年10月現在の大規模とゼネコン関連のYouTubeの状況を伝えた。
次のページではこれら塗装会社や大手大規模改修会社並びにゼネコンのYouTube使用状況をまとめたい。

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二見勇治

著者:二見勇治 Futami Yuji

建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。