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スレート屋根の割れ サービス補修NG タスマジック

タスマジックでスレート板補修

人造スレート材を化粧材として打ち付けてある屋根を「スレート屋根」というのはご存知だろう。
コロニアル、カラーベスト、アーバニーなどは商品名だ。

例えば、工事現場で有名な「ユンボ」はフランスSICAM社の商品名、Yumbo(ユンボ)。正式名称は油圧ショベル。

チロン(現ABAC)はドイツの会社名。正式名称は「温風低圧塗装機」
※社名を「チロン・ジャパン」より「エムオースプレーイング」へと変更

商品名と正式名称が分かったところで、今回は「スレート屋根の補修」について考えてみたい。

塗り替えや、見積時、スレート屋根に上がれば、必ずといっていいほど人造スレート板(以後:スレート板)が数枚割れている。
割れていない屋根のほうが珍しいくらいだ。

あまりにも割れている箇所が多すぎれば、吹き替えやカバー工法をお客様へ説明する(パミール問題は今回は触れず)が、今回は数箇所程度の割れやクラックについて記事化を行う。

良く1、2箇所だけの割れだと施主に報告せず、サービスで直してしまうことがある。

割れている箇所にコケが生えていれば、元から割れていたコトが明らかだが、「もしかしたら自分たちの誰かが、踏んで割っているかも?」とか、「足場屋がやったか?」や、段取りの都合で洗浄の前にアンテナ撤去が入ることもある。疑心暗鬼にもなりながら、施主に報告せず直してしまうケースがある。これはもちろんNGだ。

しかし純粋に親切心として、客に言わずとも直してしまうことがある。
実はこれは、非常によくない。

なぜかと言うと、台風や強風によって補修した箇所が万が一剥がれ、その破片が飛び近くの建物を傷つけたり、最悪の場合には人への事故へ至ることもあるからだ。

全くメンテナンスしていない屋根であれば、建物の所有者がその事故責任を追及される。
過去の訴訟でも、屋根瓦の保守を怠ったとして、建物所有者に責任が発生している。
判例:福岡高裁昭和55年(ネ)第155号)

もしも事故直前や近い期間に補修を「親切心」で行っていたとしても、最悪のケースとしては補修を行った業者にも責任追及がされ、加害者になる可能性がある

事故は当然防がなければいけないのだが、お客様を思って行った配慮が、とんでもない結果にもなりうる。
そしてクラックの場合、接着剤で直したり、コーキング材でくっつけ直すことがある。工法としては不確実な補修方法であり、万全とはいえない。

そこで、今回はタスマジックという、スレート板専用の浸透型補修材を紹介したい。
動画を見ていただき、その強度を確認してほしい。

接着剤などで適当に直すのは簡単だが、補修後にに強風などが発生した場合、工事した側のリスクを下げる意味でも、こういった製品を活用したい。

更に、見込み客へは施工方法の説明で説得力が生まれ、現調からクロージングに至る過程で、他社との差別化にも繋がる。
この工法でプラスの工賃が発生しても、施主側も納得してくれるだろう。

このタスマジックは「タスペーサー」で有名な株式会社セイムが販売している。
スレート屋根に対する様々補修材料を販売しているメーカーだけに、スレート板の塗り替えに発生する問題解決として生まれた製品だ。

商品としては2017年に発売されている。しかし改めて動画とサイトを参考にし、強度を確認をお勧めしたい?

施主の安全、近隣への配慮、そして工事業者側のリスクヘッジとしてもこの製品は重要だ。

但し、注意点として、近年は台風以外にも暴風雨や様々な災害による建物への影響が頻発に発生している。
塗装工事はあくまでも表面の劣化保護と装飾であり、構造自体の強化ではない。

工事に際して施主と交わす書面があるならば、「塗装・補修は構造の強化ではない旨」を明文化し、暴風、災害などでは保障や責任の対象外を謳うことを強く勧める。
原本作成は行政書士または弁護士への委託が最適だろう。

そのうえで、スレート補修は簡易的なサービスではなく、必ず施主との話し合いを持ち、適切な施工が安全に繋がるのではないだろうか。

©︎PaintBiz By 二見勇治

二見勇治

著者:二見勇治 Futami Yuji

建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。