ペイントビズ(PAINTBIZ)

Vol.2 建築塗装のYouTubeは今

国内の塗装系YouTubeでは最多

先ずは2020年現在、建築塗装系YouTubeで一番勢いのあるチャンネルは「塗替え道場」だろう。

名古屋を拠点とした戸建塗替えの株式会社七色が運営しているチャンネル。本稿制作時の10月時点の登録者数は9万6千人。
再生回数の一番多い動画では150万回ほどの視聴があり、その他は10万回から20万回ほどの再生だ。


国内の建築塗装系のYouTubeとしては現在トップクラスといって過言ではない。

しかし、建築塗装の動画か?といわれると少し首をかしげる。
しいていうと、「塗装屋を舞台に、会社内の騒動を面白おかしく演出を行いYouTube配信をしている」と、いったほうが良いかもしれない。

但し、塗り替え道場の動画は、最近のユーチューバーが制作するような内容で動画として非常に面白い。
この記事の製作中にチャンネルを開いて見入ってしまうほどだ。
更に細かく視聴すれば分かるのだが、その中にもキラリと光る「社長が語るペンキ屋の本音」を上手く表現し、「社内衝動系」と「塗装会社の本音」の二つの軸で成り立っている事がわかる。

また、チャンネル開始当初はシンプルな塗装の技術的な動画も配信していたが、徐々にFUDマーケティングを用いた内容にも変わっていった。
※FUDについては別記事を参照して欲しい。

FUDを使ったキャッチコピーを用いているのは、視聴回数を稼ぐためでありカスタムサムネイルを別途制作し、サムネイル内のタイトルをキャッチーなモノとして表示を行っている。
カスタムサムネイルとはYouTube動画のタイトル画像の事で、このタイトル画像の出来不出来によって、視聴者が見るか見ないかの大きな判断材料になる。

また、タイトル自体もネットマーケティングを意識し、サムネイルとは違い建築塗装にマッチした単語を持ちいる事で、SEOが機能するように上手く活用している。

登録こそ、2013年の11月20日だが、塗り替え道場としての初回の動画は、2018年10月23日だ。
初回から約2年間で696本の動画をアップ。
この原稿を制作しているのが、2020年10月9日のため初回からの経過日数は717日。
ということは、ほとんど毎日1本づつの動画公開を行っている計算になる。(映像編集担当はさぞ大変だろう。)

更に、総再生回数は約4千236万回にもおよび、広告表示設定になっているため、単純計算でYouTubeのみで2千万円程の収益が予想される。
しかしあくまでも塗装会社の宣伝としてのYouTubeであることから、広告効果として考えるとYouTubeからのネット全体への派生したSEOによって、受注できた塗装工事の金額はそれ以上だろう。

因みにYouTubeの動画としての概念は、動画1本1本に固有のURLがあることから、動画はWebページと同じ役割を持ち、そこにある「タイトル」はHTMLのタイトルタグと同じ意味を持つ。
各動画のページのソースを確認すれば分かるが、titleタグに動画タイトルが記述されている。
また、動画の説明欄に記載するテキストはdescription(ディスクリプション)タグとして機能する。
※descriptionは日本語に訳すると「説明」。

つまり、YouTubeに動画をアップすることで、ワールドワイドウェブの世界へ「タイトルとディスクリプション」とを公開している事になる。
そうなれば検索によって、そのテキストが引っ掛かり自社の動画がピップアップされる仕組みだ。

YouTubeであっても、特に戸建塗装の場合はタイトルや説明欄へ対策キーワードとして「地域名」を入れることは、ローカルビジネスの基本となる。
よく自社サイトではローカル対応をしているのに、YouTubeとなるとローカル対応のキーワードを入れていない会社があるのだが、それでは勿体無い。
ターゲットとする地域の地名を入れることで、動画内の検索に引っ掛かっるようになる。

話しを塗り替え道場にもどそう。

繰り返すが、「塗り替え道場」へ多くの視聴者が集まる要因は、本数もさることながら動画のクオリティーが高く、面白く演出していることだ。
毎日動画を公開することは非常に難しく、会社としての確固たる目標設定とそれを遂行するスタッフ達の努力がないと達成は出来ない。
だからこそ結果的に設立14年で愛知県、三重、岐阜での11店舗の出店に至ったのでは無いだろうか。
でも、今後どのくらい続くかが見ものだ。経過を観察してみたい。

次に紹介するのは「塗り替え道場」が登場するまでのディフェンディングチャンピオンだった、横浜の株式会社塗装職人を紹介する。

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二見勇治

著者:二見勇治 Futami Yuji

建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。