【PBコラム】外装の色が変わる?建築塗装への応用は?
BMW ボディーカラーをカメレオンみたいに変える技術!
あれっ?ペイントビズは建築塗装専門サイトだったのに、コレって自動車じゃないの?
と、誰しも思うだろう。
今日からペイントビズは自動車塗装も取り扱う。
ウソです。
当サイトは自動車情報サイトではなく、建築塗装専門サイトだ!
しかし、表面コーティングに関わりがあるため、他ジャンルでありながら今回はボディカラーの情報を掲載する。
「BMWカッコいいよね~」とか、「ブタッ鼻がなんだかな~」と思う方もいるだろう。
しかし、BMWは走りもらさることながらボディーの表面技術も突き詰めている。
因みにBMWは、バイエルン・モーター・ワークスの頭文字。
(劣評のキドーニーグリルの行き過ぎ感は、ブランディングを尖らせた結果だろう。)
先ずは、今回の情報を伝えたい。
CES2022でBMWが自動車外装の色(白黒)を電気的に変化させる技術を公開した。
簡単な仕組みを説明すると、E Ink(イー・インク)というアマゾンのキンドル・ホワイトペーパー等に採用されている技術を自動車ボディーへ加飾した仕様だ。
っで、何で建築塗装に関係あるのか?
その前に実際の映像を見ていただき、「BMW iX Flow E Ink」の変態っぷりを堪能してほしい。
ボディーカラーがグリングリン変わっていく様は、見慣れていないだけに変な感覚になる。
さて、このE Inkとはどういった原理なのだろうか?
以下の画像で解説したい。
引用:元太科技工業股份有限公司(E Ink Holdings Inc.)電子インク技術(2色電子インクの原理)
電子インクは、数百万個ものマイクロカプセル(Microcapsules)からなっています。マイクロカプセルは、人の髪の毛の直径ほどの大きさになっており、マイクロカプセル一粒一粒に、マイナスに帯電した白色顔料と、プラスに帯電した黒色顔料という2種類の電気泳動式粒子が含まれていて、それぞれ透明な液体の上下に浮かんでいます。プラスとマイナスがそれぞれ反対の電極へ吸着する原理を利用し、電界に電気を通すと、そのエリアに対応した黒色または白色の粒子がマイクロカプセルの上部へ移動していき、そのエリアが白色または黒色に映ります。
引用:元太科技工業股份有限公司(E Ink Holdings Inc.)電子インク技術(2色電子インクの原理)
ザックリとだが原理が分かったところで、このE Inkの特徴を更につたえたい。
・常態表示でも電力を消費しない。
・超低消費電力。
・電源供給がなくても電子ペーパーディスプレイ上の画面が消えずに表示され続ける。
・発光しないため、目に優しい。
このすばらしい技術により、電子書籍で採用され多くのユーザーに支持されているのだ。
今回の自動車ボディーへの採用以外にも、既にデジタルサイネージや建物等へ使われている。以下の動画は、サンディエゴ国際空港の外壁へ設置されたE Inkだ。
上記動画の取組みは、アート活動の一環として行われた。施工を見てみると、給電のケーブルが無いことから、暫定的にバッテリー内臓の無線通信による制御だろう。
これが常設方になり、耐候性のあるポリカーボネート等でカバーすれば、建物外壁や屋根への応用として、全面への貼り付けが可能になるのかもしれない。
昨今、遮熱・断熱塗料が注目を集めているものの、屋根の高温化のほとんどは、色による蓄熱の影響がおおきい。
遮熱・断熱塗料が使われていなかった時代であっても、白や銀で屋根を塗装すれば、黒やグレーよりも圧倒的に蓄熱が少ない。
そもそも、遮熱・断熱塗料のプライマーやフィーラーを使っても、その上塗りとして黒や濃色を使ってしまうと結果的に蓄熱してしまう。
しかも、夏は遮熱・断熱塗料を塗布することで屋根や外壁の温度は多少下がるが、冬はそのメリットが少ない。
それならば、E Inkを屋根に採用して、夏は白で熱を吸収せず、冬は黒にすることで積極的に蓄熱させるのはどうだろうか?
しかも、超低消費電力。更に各パーツをセンサーで温度管理したりなんかして。
あっ!でも、これだと塗装にならない。ペンキ屋の仕事が生まれないジャン。
じゃー却下。聞かなかった事にしてくれ。
©︎PaintBiz By 二見勇治
著者:二見勇治 Futami Yuji
建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。