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塗装道具探求 皮スキメーカー Vol.2

切れ味優れる炭素鋼

次に紹介するのは燕三条の株式会社坂爪製作所。ブランド名はSAKAZUME(サカヅメ)だ。

社名:株式会社 坂爪製作所
ブランド名:SAKAZUME(サカヅメ)
住所:新潟県三条市田島2-21-2
創業:1919年(大正8年)

坂爪製作所の特徴は、外装、内装業者向けの工具制作に特化していることだ。

また、皮スキの刃材へ炭素鋼を用いている。

炭素鋼は熱処理によって鋼材の硬度に自由度がある。
「焼入れ」を行えば高硬度を得られるし、「焼きなまし」を行えばしなやかさが生まれる。

但し、サビやすい。

よく刃物では炭素鋼派とステンレス派で考え方が大きく分かれるが、はっきりしている事は合金に含有している炭素量が少なければ硬度は出来くい。
そもそもステンレスとは、炭素鋼にクロムを10%以上含有させた合金がステンレスと呼ばれている。

クロムを多く入れればサビ難くなる。しかしその反面、切れ味は落ちる。

西洋の刃物はステンレス製品が多い。日本古来の刃物は殆んどが炭素鋼系だ。

例えば大工が使うカンナやノミの刃は、ほぼ全てが炭素鋼系。また、日本食の料理人も、ほぼ全てが炭素鋼系の包丁を使う。
但し強いということはその反面、割れたり欠けたりもする。
しかし、前出でも説明しているとおり、炭素鋼は熱処理によって、硬くも柔らかくもなる。

つまり、使用する職人の仕事内容へ合わせて、割れないように限界ぎりぎりまで硬くすることが可能になる。

ただし硬さとのトレードオフでサビやすい。
塗装屋ならば「サビとの戦い」には慣れているはずだから、そこらへんはどうにかなるだろう。

また、坂爪製作所の皮スキは様々な商社系のブランドでも販売され、シェア率で考えるとかなりの比重になる。
気が付かないうちに坂爪製作所の皮スキを持っているかもしれない。

また、坂爪製作所は皮スキ以外にもスクレーパーは勿論のこと、バリエーションに富んだヘラ類を制作している。
是非ともサイトで確認していただきたい。

以上が「燕三条」の皮スキメーカーになる。

前出では燕三条の金属加工の歴史、「室町時代の初期、河内国から三条に鋳物師が渡り住み」と解説した。
今回の「塗装道具探求 皮スキメーカー Vol.2」では最後に、その河内国にある皮スキメーカーを取り上げる。

次のページでは、現在最もハードコアであろう皮スキメーカーを紹介したい。

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二見勇治

著者:二見勇治 Futami Yuji

建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。