ただの棒?
お待たせしました。
建築塗装の道具を紹介するシリーズ、「塗装道具探求」。
毎回エキサイティングな塗装道具を紹介する当企画。
今回は打診棒を紹介したい。
もう一度言う。「打診棒」だ!ただの棒ではない。
ペイントビズの熱心なペンキ屋読者なら「また、変なの出してきたな!」と、そろそろ当サイトに対して「警戒心」が生まれているだろう。
またペイントビズが届ける動画によって、YouTubeに表示される紹介動画のサジェストが汚染され始めていると考えると、思わず薄ら笑いを浮かべる筆者でもある。
ではいつもと同じように、レアな道具「打診棒」を紹介したい。
さて、核心の打診棒を紹介する前に、先ずは打音調査について少々解説を行う。
打音調査とは壁面などを叩いて調査する方法で、これを打音調査という。(打診調査ともいう)
特に外壁タイルの「浮きや剥がれ」を検査する方法として普及している。この調査方法はモルタル外壁の浮きや剥がれも診断可能だ。
現在では、2008年4月1日に施行令が改正(国交省告示第282号)された事により、以下の調査と報告が義務化されている。
特定行政庁が指定する特殊建築物等の所有者(所有者と管理者が異なる場合は管理者)は、定期的に「調査資格者」による建築物を調査し、その結果を特定行政庁に報告。
また建物の所有者・管理者は定期的に建物 の調査・検査の報告を特定行政庁に報告をする義務がある。
建築基準法第12条では、特殊建築物を対象に2、3年毎の「目視及び部分打診調査」、10年毎の「全面打診調査」などを行うことを義務化されている。
この中に「目視調査」と、「打音調査」とがある。
目視調査
肉眼及び双眼鏡や望遠鏡などを使用して外観の観察を行い、手の届く範囲をテストハンマー等による打音調査を行います。
手の届く範囲とは、仮設足場・高所作業車等の機材を使わない1階部分及び階段、バルコニー部、開口部、屋上などから近い部分を言います。
全面打診調査
テストハンマーなどによる打音調査と赤外線調査があります。
テストハンマー等による打音調査は、落下により歩行者などに危害を与える恐れがある部分の全面を対象に、足場、高所作業車、ゴンドラなどを使用して行います。
赤外線調査は、赤外線映像装置を用いてタイル面の表面温度を測定し、健全部と浮き部を判断する方法です。
引用:(一社)全国タイル行協会 特殊建築物定期報告制度とは
詳細については(一社)全国タイル行協会で確認していただきたい。
そして上記の打音調査で出てくる「テストハンマー」こそが、今回の主役「打診棒」となる。
打診棒とは冒頭の写真のように、金属製の棒にパチンコ玉のような小さな鉄球が付いたの検査用のツール。
伸縮可能なラジオアンテナや自撮り棒のようなテレスコピック形状の棒に鉄球が付いたものもある。
使用方法は先端の鉄球部をタイルなどの壁面に滑らせたり叩いたりすることで、音色の差による「浮き」を診断する。
浮いていない箇所は「カツカツ」や「コツコツ」と小さな音が鳴るが、浮いている箇所は「ポコポコ」と大きな音が鳴る。
または、ツンツンとコンコンのように壁面の種類によっても音色が異なる。
分かりやすい動画があるのでこちらを参考にして、先ずは「音の鳴り方の違い」を体感してほしい。
音を出して動画を視聴いただきたい。
動画引用:【タイル調査】打診棒を使用した調査です。音の違い 株式会社髙橋工業
音の違いで浮いている箇所が分かるため、浮いている不良部分にのみマーキングを行い、改修時にはその箇所だけタイルを剥がし、新たなタイルの貼り付けとなる。
上記動画の先端形状を見ても分かるが、使用回数の多さから磨耗によって球状ではなくなり、先っぽが少し尖り男っぽくなっている。
長時間の戦いの痕跡だ。
大規模マンションなのど大型の建造物で全壁面の検査を行うのだから、長時間の繊細な実作業は心身ともに疲労する。
だからこそ、打診棒は非常に大事にツールとなるのだ。
そして今回「塗装道具探求」で紹介するツールは、その道を究めるに相応しく超ハイスペックな逸品となる。
次のページでその詳細を明らかにしたい。
著者:二見勇治 Futami Yuji
建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。