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東日本塗料【衝撃!1キロ単位で量り売り】オンライン取材

東日本塗料の社風に気がつく

これが「ブランディング」というコトか?

そもそも、このネズミ。BtoB向けの塗料缶ラベルに、子供が好きそうなキャラが必要だろうか?
しかも数十年来このデザインだ。

当時は100%近くがオッサンの塗装職人しかいなかった。
最近の職人はまともな人が多いが、筆者の幼少期は、今とは比べられないようなヤバイ職人が大多数だった。
常識的にターゲティングの観点から考えれば、こんなにカワイイデザインを採用する事自体、会社がどうかしている。

更にインタビュー時に、PBササキが言っていた、

「東日本さんは、いつも先を行き過ぎちゃってるから市場が追いつかない。
ハイフローンの半艶の時もそうだったじゃないですか。
光沢しか売れない時代に、半艶出してて。
その結果、今や半艶か3部艶しか売れない。それと同じですよ」

これが東日本塗料の社風や企業文化の表れだ。

だからこそ、今回の「量り売り」施策へのチャレンジが、会社を揚げて行えるのではないだろうか。

昨今のメーカーは、マーケティング主体で商品開発を進める。
それ自体が悪いわけではないが、別のベクトルや可能性に対しての寛容性がなくなっているように思える。

結果、全体が同じ方向を向き、商品の差別化が難しい。
それ故、塗料メーカーは戸建系では工事会社の囲い込み戦略へとシフトしている。

しかし、今回のチャレンジ、「量り売り」は少し無謀かもしれない。
なぜならば、キロ単位で分けるということは、通常の15kg、4kgの2アイテムが、合わせて15倍、つまり7.5倍に増える換算だ。

東日本塗料柳澤氏が言っていたように「受発注システム」に強烈な負荷がかかる。

1商品が7.5倍になるということは、それだけ商品マスタが増え、JANコードで管理している事業者ならば、それだけ申請も必要になる。
しかもこれはメーカーだけの問題ではなく、問屋、販売店、工事会社を含めた建築塗料・塗装業界全体に関わってくことだ。

東日本塗料柳澤氏は取材時、

『塗料販売店さんからの評価が思ったよりも高く、
「面白いんじゃない」というお声が多くて、少しビックリしています。』と、あった。

「思ったよりも」という部分は、東日本塗料側も反対意見を想定していての言葉だろう。

例えば、販売店側が「メーカーのリサーチデータ収集でアイテム数を増やすなよ!今回だけのマスタ登録が必要なの?」という反応もありうる。
但し、問屋や販売店では毎日のように、様々な価格改定や廃盤、新商品の追加があり、実は通常業務の一環だ。
しかし販売員(営業)の業務は煩雑になる。

そして今回の施策を踏み台にして15kg、4kg限定から、キロ単位のバリエーションが増えるとなると、販売側と塗装工事側のメリットが発生する可能性が生まれる。

いつもはメーカーリリースなんか持ってこない「問屋の営業」が、販売店にリリースを持ってきたコトが、その可能性に対する期待感ではないだろうか?
リリースを渡さない問屋の営業はズボラではなく、必要と感じていないからリリースを渡さないし配らない。今回は会社の方針で配ったのだ。
何故ならば、小分けで商品バリエーションが増えれば、価格上昇で粗利割合が増えると共に、購入機会が増えるのだから、問屋や販売店もウエルカムだろう。

もしかするとそこから、小分けにするための容器の必要性も生まれ、使いにくい容器(一斗缶・丸缶)や、空缶処分の煩雑さから開放されるキッカケになるかもしれない。
(この部分は、【時代を塗り替える人々】奴間伸茂 塗料開発の次へ(後編)。現在執筆中。)
※容器メーカさんコレ、チャンスですよ!

だからこそ「面白いんじゃない」という意見が出ている。

本施策は、東日本塗料側ではデータ収集ができ、自社マーケティングに活用ができるだろう。

但し、そこには多くの問屋や販売店、工事会社の「見えない作業が貢献」をしている。販売事業者の協力があってこその施策だ。

そうであれば収集したデータは抱え込まず、テスト終了後に関係者への提供が必然だろう。
もしかしたら建築塗装全体が抱えている「閉塞感から抜け出せる何かが見つかる」可能性もある。

今回の施策は滑稽無糖なチャレンジではなく、合理的な方法を探す第一歩。

また、東日本塗料の取り組みはネットにも現れ、現在公式Twitterによる工事会社や販売店との連携が始まっている。
運用はインタビューに参加いただいた、東日本塗料の東海(とうかい)さんが担当しているとのことだ。
SNSは事業規模の大小よりも、「顧客の声へどれだけ反応できるか」にかかっている。正にそれが、今回の施策とマッチしているのだろう。

そして、東日本塗料の社風から始まったキャンペーンで、「元気になる方法」が生み出される…かもしれない。

東日本塗料のネズミは「私達はチャレンジします!」という、アイデンティティの象徴だったと気づかされた。

©︎PaintBiz By 二見勇治

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二見勇治

著者:二見勇治 Futami Yuji

建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。