塗料が無いとペンキ屋はどうなる?
とっ拍子もないタイトルで申し訳ない。
しかしこの問題は、リアルな話しで米国では1年以上前から塗料争奪戦が起こっているのだ。
情報のソースとして、米国の大手ニュース専門放送局CNBCが報じている。
上記の動画を要約すると、以下となる。
- 米国ではコロナ禍の影響で、おうち時間増加、自宅DIY塗装が急増。
- 塗料メーカーの生産力が追いつかず、供給不足発生。
- 中国とインドで生産の、塗料の顔料(色の基材)調達が海上輸送Maxで入手困難。
- 通販市場急増で陸上輸送の総数が上限に達し、顔料が塗料メーカーに届かず、生産・供給が停止。
- 2021年2月、テキサスの 大寒波で大規模停電。凍害被害で樹脂工場が稼動停止。状況は更に悪化。
- 2021年7月27日、世界的な酢酸メーカーのライオンデルバセル社が複数の事故で稼動停止。
- アフターコロナの景気拡大。全世界で物流機能パンク。多くの原材料が塗料工場に届かず。
- 様々な要因が重なり、段階的に塗料価格が急上昇。
内容的にはこんな状況だ。
コロナ禍のみの影響だけではなく、気候変動、事故も重なり「泣きっ面にハチ」と言ってもいいだろう。
さて、このような状況下で米国の塗装会社は、どういった影響を受けているのだろう?
YouTubeでは、塗装会社も以下のようにコメントしている。
ペンシルベニア州の塗装工事会社、アマートペインティング経営者、Ryan Amato(ライアン・アマート)氏がこの状況を解説。
タイトル:Dealing With The Paint Shortage
表題訳:塗料不足への対応
(自動翻訳で日本語訳視聴が可能。)
上記の動画を意訳すると、以下となる。
- ベンジャミンムーア、シャーウィン・ウィリアムズ、PPG(日本でいう、ニッペ、関ペ、エスケーのような大手塗料メーカー)など全塗料メーカーで塗料不足発生しています。
- ネットニュースでその要因を知ることができますよ。
- 原因は、凍害・火災・コロナ禍とドライバー(物流問題)不足。
- 皆さんにとって、この本当の意味がわかりますか?
- 仕事をするのには、塗料を持っている必要がある。だから仕事ができる。
- つまり、見積どおりの、塗料を調達できないかもしれないので、別塗料を確保するしかないんです。
- 2日前、キッチンキャビネットの塗替えを行いました。
- 通常、2ガロン(7.6リットル)の塗料を使用します。
- でも、たった2ガロンの塗料を買うために、4つの塗料店へ行かなくてはなりませんでした。※1
- わたしは塗替え工事のために最善を尽くしますが、塗料が調達できないかもしれません。
- これは社会的に、スーパーデューパー(大規模な状況)が問題の根幹です。
- 私の塗装会社だけの問題ではなく、全ての塗装工事会社が影響を受けています。
※米国では塗料店の仕組みが日本と違い、塗装会社自ら買いにいくケースがままある。
4店も駆けずり回らなければ、塗料が買えないということは、塗装会社、職人、DIYユーザーとの間で、塗料争奪戦が起こっているのだ。
そして、塗料がなければ仕事ができず、工事代金も入ってこない。
では、日本の現在(2022年4月末)の状況はどうか?
昨年5月、防食塗料の原材料工場で粉塵爆発が起こり、一部塗料の生産にダメージが起こった。そして昨年7月、大手塗料メーカーの人気塗料が一時供給停止になったのは記憶にあたらしい。
しかしその他にも、メーカーは公表していないが、既に裏側で一部塗料に欠品が起こり始めていると聞く。
とある塗料のカタログにある、指定色で発注しても「その色、今ダメなんです」との返事があったとか。
各所でそのような問題が起こり始めている。
今後日本でも、米国のような塗料争奪戦が起こるのだろうか?
コロナ禍の影響により、設備会社は水周り製品が購入出来ず工事が遅延し、ウッドショックで材木が高騰しそこでも工事が進まなかった。
我々塗装工事も他人事では済まない状況になりつつある。
つまり、コロナを皮切りとした、ウクライナ(西欧社会)vsロシア(独裁国家)がそれに続き、世界経済デモリッションで地球の急変革の中にいるのは間違いがない!
©︎PaintBiz By 二見勇治
著者:二見勇治 Futami Yuji
建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。