ペイントビズ(PAINTBIZ)

建築塗装ロボット 海外編(その1)

完成度高すぎ!塗装ロボットのピクトボット

では早速、海外における「建築塗装ロボット」を紹介したい。

最初に紹介するのはシンガポールを拠点とする、TRANS FORMA ROBOTICS(トランス・フォーマ・ロボティクス)のPICTOBOT(ピクトボット)A1000だ。
下の動画は2016/11/01に公開されている。YouTubeアカウントは開発者の一人、Ehsan Asadi(エーサン・アサディ)氏。

次の動画では、このピクトボットA1000の凄さが分かるPVを掲載。
一瞬も見逃さないようにしてほしい。
アカウントはトランス・フォーマ・ロボティクス社の動画になる。

ピクトボットの凄いところは自動制御はさることながら、10Mまでエレベータを伸ばし、ロボットアームが高所塗装を行える点だ。
この機体は高所対応型として、非常に完成度が高い。

入力信号として、3軸モータージンバルに乗ったFPVカメラやレーザー距離計が組み込まれ、リモコンもゲームコントローラーを流用したものを採用している。
現在はiPadで様々なデータ入力や操作が可能だ。

画像引用:• IEEE ROBOTICS & AUTOMATION MAGAZINE • june 2018 P85

詳細や仕様についてはトランス・フォーマ・ロボティクス社のサイト内の論文がある。そちらを一読してほしい。

新型は高所塗装型ではない屋内用機種も開発され、更に実用性にが高い。
下の動画を見れば、その凄さが分かるだろう。

全てのPICTOBOTは、アシスタントロボットの測距専門「QuicaBot」(クイッカボット)とのクラウド上のデータリンクによって、3Dモデリングと塗装作業とを分けて行い、作業スピードと完成度向上を達成している。 
更には工事終了後、完工検査もアシスタントロボットが担う。

PICTOBOTの簡単な仕様は以下のとおりだ。

動力 バッテリー駆動 4時間
積載 最大40リットル
効率 塗装工:3時間 100平米 PICTOBOT:2時間100平米(66%増)
高さ A1000型:0~10m 屋内型:0~3m
重量 400kg(バッテリー込)

上記動画の中で解説をしているのは、シンガポール国立南洋理工大学(Nanyang Technological University)の機械航空宇宙工学部教授であり、2020年までトランス・フォーマ・ロボティクス社のCEOを務め、現在会長のI-Ming Chen(イ・ミン・チェン)博士。
因みに南洋理工大学は2021年のアジアNo. 1の工科大学にランキングされている。しかし工科系だけではなく大学としても、アジア大学ランキング5位に位置する非常に優秀な大学だ。
次の順位6位に東京大学がランキングし、10位が京都大学となる。
その南洋理工大学のメンバーによって、トランス・フォーマ・ロボティクス社が組織されている。

PICTOBOTの利点として、人が長時間の作業が行えない原子力発電所などでも塗装工事が可能となる。
デメリットは平滑な床がないと運用できない。また重量が400キロになるため、搬入にはフォークリフトやクレーンが必須だ。

今回はトランス・フォーマ・ロボティクス社のピクトボットを紹介した。

もしかすると近い将来、我々ペンキ屋は塗料を補充したり、バッテリー交換をするオペレータに仕事が変わってしまうかもしれない。
そんな懸念を抱きつつ、次回も様々なロボットを紹介したい。

最後にオマケとして、こんなのも塗装ロボットのカテゴリーに入るのだろうか?

©︎PaintBiz By 二見勇治

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二見勇治

著者:二見勇治 Futami Yuji

建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。