キャッチコピーに踊らされる
昨今、我等「塗装業界」にも日夜様々なアプリケーションが導入され始めている。
今回の記事は、便利なアプリや様々なデジタルツールを紹介するのではなく、それらシステムに対しての考え方を紹介したい。
最近ではDX(デジタル・トランスフォーメーション)とかいう言葉が流行り、「最新アプリを使わなきゃ!」といった強迫観念に陥ってはいないだろうか?
そもそも、DXだけではなく、過去からデジタルツールの普及には様々なバズワード(流行語)が利用されてきた。
「デジタル化」からはじまり、ファジィ、IT革命、Web2.0、SNS、クラウド、フリーミアム、IoT、ビッグデータ、Ai、等々…
こういった言葉に踊らされてはいないだろうか。
なにか、SDGsとかISO認証のような旗揚げも、「自由を標榜したルックスで、実は奴隷統率の仕様書」みたいな気がする。
目の前にニンジンをぶら下げないと、走らない人々を鞭打つキャッチコピーだ。
そしてSDGsも目標は2030年。このバズワードすら時が立てば消滅し、新たなキャッチコピーが生まれる。
また、よく建築業界は「最もIT化されていないジャンル」といわれ、まるで「デジタル化されていないことが悪」のように捉えられている。
しかし、建築業界の歴史は非常に古く、そもそも太古から連なる人類の営み全てが建築と関わっていると言っても過言ではない。
そして、昔の人間も馬鹿ではなく、効率を求めるべく多くのイノベーションを行ってきた。
その結果が現代の建築や工事や物流であって、綿々と連なる歴史を経て「既に高レベルな効率化」が行われていたからこそ、デジタルに頼らなくとも仕事が成立している。
こう考えてもなんら不思議ではない。
更に1980年代には建築業界でもCADが一般化し、それこそ40年前には既にデジタライズが行われている。
また、デジタル化で作業効率を上がり、今までよりも楽になると誰でも幻想を持つものの、効率が上がった分だけ労働者を減らし、また元に戻るのは知っているじゃないか。
それなのに、なぜかデジタル化だけが良いという刷り込みが行われているのは何故だろう?
但しデジタル化とは一部の技術のみをデジタル化することを指し、DXとは環境やビジネススキームまでを総合的に脱アナログ化する方法論だ。
そして、DXで衰退した産業もある。
我々ペンキ屋のDXはどこへ向かうのだろうか?
それではDXで衰退・崩壊した、ある産業の事例を紹介し、破壊的イノベーションの先に何があったのかを検証してみたい。
著者:二見勇治 Futami Yuji
建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。