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塗装道具探求 超ハイスペックな「打診棒」

超ハイスペックな棒

では早速、最先端な打診棒を紹介する。

品名:スプリングネック式打診棒スティック
発売:土牛産業株式会社 製造:井本刃物株式会社
引用:土牛産業株式会社

先ずは販売会社の簡単な紹介を行いたい。

所在地は兵庫県三木市にあり、同地は三木金物の生産地として有名な地域。
イプロスの会社概要では「ハンマーや打音検査の打診棒から工具差しまで幅広い種類の工具の製造・販売」とある。
塗装工事関連の道具では、プロ向けの革スキや大型スクレイパーまでもラインナップ。

では、今回のツールの特徴を説明したい。
詳しい動画があるのでこちらを視聴してほしい。

商品名からも分かるとおり、鉄球部と棒部分とがバネで結合され、先端部分がフレキシブルな形状だ。
実はモイスチャーメーターなどで有名な、(株)ケツト科学研究所からも以前はバネ式の打診棒が発売されていたが今では廃盤になっている。

そして、スプリングネック式打診棒スティックの仕様を見て驚いた。

仕様のシャフト部に注目してほしい。
カーボンシャフト」とある。打診棒にカーボンだ。

昨今、カーボン素材の製品は珍しくはなくなってきたが、打診棒にカーボンシャフトとはなんたる贅沢な仕様だろう。
釣竿やゴルフクラブ、テニスラケットなどならば理解が出来るが、打診棒にカーボーンなのだ。

この部分にメーカーのコダワリが現れているのは間違いない。

更に、動画を確認すると「ウエットカーボン」ではなく「ドライカーボン」にも見える。
カーボン製のモノには、実はウエットとドライがあり、両者は全く性能が異なる。

ウエットカーボンは単なるカーボン素材を樹脂で固めただけであり、純粋なカーボン製品ではない。
一方、ドライカーボンは型に巻き付け、それを釜で焼くことによって結合させ、軽さはもとより硬さやしなやかさはウエットカーボンに比べで別次元の製品になるのだ。

本当の意味でのカーボン製とは、ドライカーボンに表面保護用の塗装が施されているモノをさす。
ウエットカーボンはFRPとなんら代わりが無い。
(確か、兵庫に有名なカーボン焼屋があると聞いた記憶が…)

そしてスプリング部分にも被服が施され、恐らくバネの揺れを制御するダンパーの役割をしているのではないだろうか。

単なる打診棒へ、どれだ技術を投入しているかと思うと土牛産業が少し怖くなってくる。
そして真剣な製品作りがが垣間見えた工具ではないだろうか?

真剣に作業する人々がいるからこそ、真剣にモノを作る人達がいる。
今回の「塗装道具探求」でも、素晴らしい道具と出会え事に感謝したい。

©︎PaintBiz By 二見勇治

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二見勇治

著者:二見勇治 Futami Yuji

建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。