【時代を塗り替える人々】奴間伸茂 塗料開発の次へ(前編)
塗料を売る人々の重要性
奴間:
塗料・塗装関連製品の専門商社には、塗料メーカーよりも顧客が真に欲していることをよく知っているところがある。顧客の技術部門とか、上層部との関係性がものすごくいいんだよ。
じゃあ、技術屋にそれが出来るかといったら、そこまで中々できないんだよね。技術については密接にかかわることができるかもしれないけれど、全体の動きなんかは難しい。しかも顧客の顕在的要望・潜在的要望を汲み上げて、塗料メーカー側へ非常に厳しい注文もつけてくるよ。
つまり、販売、営業。売って頂く人達の役割は大きいよね。
PB二見:
例えばこの前のニッペじゃないですけど、シンガポールのウットラムはニッペの販社だったわけじゃないですか。一応はメーカーでもあるんですけど、それがニッペよりも事業規模が大きいという事ですからね。
奴間:
だから販売店の力って重要なんだよ。
それがメーカー主導になっちゃうのは、販売店とか塗装会社側の怠慢でもあるかもね(一同笑)
この前、ある工業製品塗装の塗装会社から相談を受けたんだけど、「塗膜がある条件で不具合を起こす」って。塗料の名前を聞いたら、僕が入社した時代以前に開発された塗料でスゴイ古いタイプの塗料だったんだ。
その後に開発、発売されている製品は対策しているからそんな不具合が起こらないのに、何十年も問題を抱えていたと思うと気の毒になっちゃうよね。
本来は販売店がそういった情報を顧客から引き出して、別の塗料を提案してあげていれば、仕事も簡単になっていたし、競争にも勝てて売上だって上がっていたかもしれない。
昔はさ、販売スタッフも塗料の知識が豊富で、お客側から技術的な質問とか、クレームがあっても話しを聴いて提案ができる人が多かった。
でも今は塗料も難しくなったのか、あるいはあまり勉強しなくなったのか(笑)
客からの質問があると「じゃー、メーカーに問い合わせてみます」って、これじゃあ単なる連絡係りなんだよね。
「それでは駄目だ」って事で、日本塗料商業組合では「塗料マイスター制度」※9という資格を今準備していて、その手伝いもしている。
この資格は、塗料販売会社や塗料店のスタッフに塗料について勉強してもらうことで、塗料への専門性を高めてもらうことと、商品知識を付けてもらう事なんかが目的だね。
顧客の要望を汲み上げて、塗料や塗装方法、工法の提案ができるように、「塗料マイスター制度」を準備しているんだ。
製造・販売・塗装、この3つが今まで以上に一体になって動く事が求められている。
この3業態のパワーが集まれば、これからの塗料・塗装業界は大きく変わるんじゃないかな。
※9 日本塗料商業組合が企画している「塗料マイスター制度」についての詳細は、「塗料年鑑2020年版」(発行:塗料報知新聞社)をご参照ください。
【次回・・・時代を塗り替える人々 奴間伸茂 塗料開発の次へ(後編)へ続く】
(現在執筆中!)
写真:奴間伸茂氏(右) PB佐々木(左) 撮影:PB二見
©︎PaintBiz By 二見勇治
著者:二見勇治 Futami Yuji
建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。