映画の中の塗料と塗装 その1
塗料の意味とストーリ
この映画の本質は、週末のドンチャン騒ぎをしているパリピの話しではなく、原題の「Saturday night fever」(サタデイ・ナイト・フィーバー)も「土曜の夜の熱狂!」という意味でもない。
本来の解釈は「土曜の夜の一瞬の戯事」的な、ネガティブな意味合いのタイトル。
生まれた場所や環境による諦めを、ダンスとして鬱憤を晴らすも鼻をへし折られ、複雑な人間関係とそこから少し大人へと成長していく、トニー・マネロの心の成長をつづる青春映画。
だからこそ、重要なオープニングに出てきた塗料の缶のラベルには、「SEMI-GLOSS」セミグロスの文字が長々と映し出されている。
しかも映画の冒頭は、非常に重要なシーンとして綿密に作られ、意図的に様々なアイテムを使うことでイメージと結びつける効果をもたらしている。
このオープニングシーン、0:57では真新しい靴との2ショット。
2:32では缶の揺れがビートを刻む。
二度にわたり塗料缶のカットが挿入されているのは、そこに深いメッセージが込められているからだ。
主人公の最先端ファッションのブーツは光り輝き、ストリートを闊歩している。
※アメリカ人にとってのブーツとはアイデンティティーや自己表現のアイコン。
しかし、持っている缶にはセミグロス。
つまり、半光沢。
「光っていも無いし、輝きもしない」という複線が隠されている。
光るブーツ。手にする光らない物。
この映画を象徴するアイコンとして、冒頭に2つのアイテムを対比させているが分かったときには、「なるほど・・・」と唸りを上げるしかなかった。
当時流行っていた「サブリミナル効果による演出」のオープニングとビージーズのBGMあったからこそ、サタデイ・ナイト・フィーバーが世界的な大ヒットを飛ばし、ジョン・トラボルタはスターダムに駆け上がった。しかし、彼の演技の本質はダンスだけではなく、目線と表情で抑揚を表現する凄さが強烈で、動かず、踊らずとも物語を一瞬で作り上げる演技にもある。
更に本編を一瞬でも見れば分かるが、1970年代アメリカ塗料店の店舗の凄さが分かる。
日本の塗料販売が、アメリカの50年遅れていたという残念さが垣間見れるアーカイブだ。(色々な考え方はあるが…)
是帆ともこの映画、サタデー・ナイト・フィーバーを、塗装・塗料の視点で見て欲しい。
因みに続編は1983年の「ステイン・アライブ」。この映画のラストでも…
更に監督はシルベスタ・スタローン(当時37歳)だ。
しかし、こんなところに隠されているペンキの意味を見つけるのも、ペイントビズの役割。
読者の方々も「俺もこんなの知ってるゼ!」っーのが、あったら要投稿してほしい!
皆の意見を、待っている!
でも、「その2」はベスト・キッドだけどね。
©︎PaintBiz By 二見勇治
著者:二見勇治 Futami Yuji
建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。