アメリカならではの塗装
アメリカならではの大胆な工法を日本は馬鹿に出来ない。
日本の近代塗装の幕開けは(諸説あるが)黒船来航を切欠として、アメリカからの塗装技法伝来よりはじまった。
そして長い年月を経て、日本特有の塗装技法が確立された。
塗装以外に米国から伝わった代表的なものといえば、自動車だろう。
フォード社の生産方法の真似をしてトヨタが自動車を増産し、100年経たずして世界のトップ企業まで上り詰めた。
しかし今では、テスラモータースのような新たなゲームチェンジャーが現れ、エジソンの電球でアメリカが世界を変えたような、生活の根本までもをイノベートする技術革新を米国は温めている。
また、日本製の高機能な家電が一時は世界を凌駕していたものの、GoogleやApple、AmazonとFacebookなどが起したイノベーションを日本発信では成し得なかった。
塗装の世界も常に変化し、塗料や道具と共に「塗装のビジネス」も物凄いスピードで変容している。
そういった変化を受け入れられるマインドが無いと、進んでいけない業界であるかもしれない。
ペイント・ライフTVの塗装工事は日本の塗装と比べると決して繊細ではないが、パワーに溢れ「自信」にみなぎっている。
そして自信があるからこそ説得力もある。
だからこそ、様々なメーカーから商品提供を受け、広告活動に近い商品紹介を行っているのだろう。
新しい道具や工法をドンドン紹介し、米国塗装業界でインフルエンサーのような活動をしている。
メーカーで言うと、グラコやワグナー、タイタンと言ったメーカーが連なる。
動画の内容も、圧送ホースの塗料の送り方や片付け方法なども解説し、映像の作りとしても丁寧だ。
その他、国内では見かけない種類のマスカーや、エアレス専用のCardboard shield holder(養生用ダンボール長柄ホルダー)など、ペンキ屋ならば仕事のヒントとしても有益だろう。
写真:エアレスの作業でCardboard shield holder使うクリス・ベリー氏 ペイント・ライフTVより抜粋
その他にも、知っていても使わないような塗装道具「ペイントミット」や様々な変わった道具の紹介も目を見張るものがある。
中にはエアレスガンをダブルに分割するノズルなども紹介し、広範囲のサイディングを一気に塗り進む。
もう見ているだけで右手がプルプルしそうな、ヤバイ代物。(日本の重力式の双頭ガンはさらに重いが)
写真:様々な塗装工具の紹介を行うクリス・ベリー氏 ペイント・ライフTVより抜粋
動画を見て気が付くのだが、何気に下地処理が丁重でパテ処理が施されている。
そのパテもただ擦り付けただけではない。釘頭もサビ止めを行い手を抜かない。良い仕事に共感が持てる。
著者:二見勇治 Futami Yuji
建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。