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サビ 亜鉛いっぱい塗料→高耐候めっき塗料(MAZAX)後編

MAZAXの施工方法

高耐候めっき塗料MAZAXの塗装方法は、電食の原理原則から考えれば分かるとは思うが、今一度整理して記載したい。

先ずはサビ発生のメカニズムを解説する。

地球の空気は21%の酸素を含みます。
このためほとんどの金属は、純金属では存在できず大気中の酸素と結びついた酸化物の状態にあります。
鉄は酸化物である”鉄鉱石”として存在するのが自然の姿です。
鉄鋼製品をつくるには鉄鉱石を炭素(コークス)で還元して”鋼(はがね)”にします。
しかし、そのままでは鉄が大気中の酸素と再び結合して酸化してしまいます。この鉄の酸化が「錆」という現象です。

引用:日本製鉄>錆発生のメカニズム

引用:日本製鉄>錆発生のメカニズム

手っ取り早く言うと、「鉄分子の一部がイオン化し、酸素と水と反応することで錆びが発生する。」しかも、鉄だけではなく様々な金属も同様だ。

防食塗装とは錆びさせたくない金属に、「錆びやすい金属を密着」させて犠牲にする塗装。

鉄を錆びさせたくないから、亜鉛をくっつけて、亜鉛を錆びさせ(犠牲にして)鉄を守る。

亜鉛がいっぱい入った塗料がジンク・リッチ・ペイント。
その最新バージョンがMAZAXだ。

つまり鉄の素地と、防食塗料とを密着させ通電しなければ意味がない。
※正式な施工方法は日新インダストリーMAZAXの「ジンク塗装仕様書」を参照。

ペンキ屋だとどうしてもシーラなどのプライマーを考えてしまうが、防食塗料ではプライマー類の下塗りはNG
通電しなくなり塗料の性能を殺してしまう。

また、サビは通電しない。したがってサビの上に塗料を塗布するのもNG。

溶融亜鉛めっきや、トタン等が白く粉を吹いているのを見たことがあるだろう。これは亜鉛のサビで、白サビという。
このサビも通電しないため、白サビもケレン。但し、亜鉛系のめっきが活膜ならば、白サビだけをペーパーなどで除去の後に即塗装。

現場だと3種ケレンで十分だろう。但し、サビがひどいようならば2種ケレンが必要だ。

ZAM鋼板の活膜が残っているのならば、白サビだけを落とせば通電できるし、ペーパーやグラインダーによるケレンならば、目粗しでストラクチャーが出来、表面積が増え密着力も上がる。

また、MAZAXの特徴として、素の鉄鋼材に塗装すれば、ZAMほどではないが既存のジンクリッチペイントよりも防食性能が高い。

但し、金属素地のケレンは、1種もしくは2種ケレンが必須。
屋外ではサンドブラストは難しいため、ディスクグラインダーなどの2種ケレンでサビ、塗幕を全撤去する。
ケレン自体が面倒な作業にはなるものの、ジンクリッチペイントは工程数が少なくて済む。

通常の鉄部塗装では、ケレン・清掃・サビ止め・中塗り・上塗り、の5工程。
ジンクリッチペイント系はケレン・清掃・下塗り・上塗り、の4工程となり、塗装工程自体は1回少ない。

また町場ではケレンを出鱈目にやっている業者も多いが、公共工事などでの施工経験の多い塗装会社ならば、2種ケレンは難しくないはずだ。
工程が少ないのに高耐候の塗膜を得られるのだから、防食塗装を行う方がクオリティーを追求できるのではないだろうか。

最後になるが、高耐候めっきを塗装する際の注意点として、「高耐候めっき」が持つ機能を活かす塗装をするのか?そうでないのか?を考える必要がある。
塗り込めるのは誰でもできる。しかし下地の素性を知り活用するのは難しい。

昨今、機能性塗料が多く増えている中で鉄鋼材の塗装に関しては、機能性塗料として捕らえられていない面があった。
しかし、60年も前からあった防食塗料も、十分に機能性塗料だ。

そして、原理原則が分かれば塗料の選択や、塗装方法もおのずと見えてくる。
カタログや仕様とおりの塗装は簡単だが、原理を知ることで別シーンの塗装へも応用もできる。
※塗料毎の塗装仕様は厳守。

しかし亜鉛がいっぱい入っている塗料は他にもある。
どれを選ぶかはあなた次第。
引き出しを増やす事が、技術向上ではないだろうか?

©︎PaintBiz By 二見勇治

前のページ高耐候めっき用の塗料は1種類

二見勇治

著者:二見勇治 Futami Yuji

建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。