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塗装道具探求 皮スキメーカー Vol.1

皮スキが生まれた経緯

建築の塗装で欠かせない道具といえば、塗料と塗装道具、刷毛やローラー、塗料を入れる容器やコンプレッサー、スプレーガンなどだが、工事内容によって何種類もの道具や工具は欠かせない。

その中でも、ほぼ全ての職人が必ず持っている道具がある。
それは「皮スキ」だ。
塗料缶のフタを開ける、ケレンをする、掃き掃除したあとの小さなチリ取りにもなる。

皮スキの使い方を並べると膨大な数になってしまうので、今回は省かせてもらうが、「ペンキ屋必須道具」へ皮スキが最初にランクインするのは間違いないだろう。

では、その皮スキは誰が作っているのか?

ホームセンターで買えば数百円からある。それなのに塗装工事必須道具なのだ。

今回の塗装道具探求シリーズでは「皮スキメーカー」を取り上げる。

皮スキといっても、スクレーパーとは違う。
スクレーパーは削ったり、切ったりすることがメインの道具で、小型のモノから超大型のスクレーパーまであるが、皮スキのジャンルには今回は含めない。
あくまでも、腰袋に入るサイズで塗料の缶を開けられる、万能工具としての皮スキを考えたい。

では、皮スキはどうやって生まれたのだろう。

諸説あるようだが、株式会社 源邑光 北野刃物製作所では次のように表記。

昭和35年(1960年) 牛革をなめす道具が塗装用に改良され、「皮スキ」として使われるようになった。※当時の刃物は切れすぎていたため。
全鋼で製作し、全国に広がりヒット商品となる
昭和35年(1960年) 6月 3代目 北野 修司が代表取締役に就任。従来の皮スキを改良し、「Y型皮スキ」が誕生する。
引用:株式会社 源邑光 北野刃物製作所

それでは原点の「革なめし」の工具を取り上げたいところだが、革なめしは古来よりある技術であるものの、日本の歴史を考えると少々ナーバスな部分があるため、今回は取り上げない。
また、「皮なめし」なのか「革細工」なのかの判断が出来ないために、その工具の派生として断定ができない。

「皮と革」の違いを説明すると、生きた動物の表皮を「皮」といい、その皮を一定の厚さへ加工し防腐処理したものが「革」となる。
但し、木材などの表面も表皮という。日本語は難しい。

しかし、革細工には「革包丁」というものがある。

写真撮影:PaintBiz二見

革包丁の使い方は、料理の包丁や小刀とは違い、写真のように刃先を小指側に握り、真下に構え手前に引いて切る。
革を漉くときには、刃を鋭角に構えソギ落とす。

写真撮影:PaintBiz二見

画像引用:クラフト社 革包丁

革包丁のフォルムは、Y型でない皮スキに非常に良く似ているため、ここからの派生で皮スキが生まれた可能性が高い。

そして刃先が広がり、皮スキとして誕生したのだろうか。

写真:PaintBiz二見(私物)

次のページから皮スキのメーカーの紹介を始めたい。

今回は刷毛メーカー、ローラーメーカーの販売している皮スキではなく、純粋に金物工具メーカーを取り上げる。

次のページ刃物の町と皮スキ

二見勇治

著者:二見勇治 Futami Yuji

建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。