ペイントビズ(PAINTBIZ)

建築塗装業界とコロナ不況の現状 2020年8月版

日本ペイントHDだけが躍進

ん?なんだ?塗料大手他社と線の傾きが違う。

 

なんと、コロナ不況真っ只中でありながら、日本ペイントHD(以後、ペンキ屋としての敬愛を込めてニッペと表記)だけが右肩上がりじゃないか?

そう、ニッペだけがコロナ不況の逆を行き、市場高値をドンドン更新している。
正直、何が起きているのかが分らない衝撃。

しかもこの記事を執筆するため、グラフの抽出を行っていた翌日の8月21日、ニッペはシンガポール塗料大手のウットラムの傘下に入ると発表。(スゲーよニッペ)
ニッペとウットラムの合流(合弁でも買取でもないので合流と表記)についての詳細は、別途の記事を今後掲載するが、特にウットラムのゴー・ハップジン代表についてペンキ屋として思うところが多分にあり、ペンキ屋魂を込め全力で記事を制作したい。

話しがそれたが、ニッペの株価に戻る。

ニッペも他社同様、2020年3月半ばに株価が急落したものの、その数日後からグングン値を上げ5ヶ月たった現在、ニッペ史上の株価最高額を日々更新している。

では何故、国内大手塗料各社が急落したにも関わらず、ニッペだけがその反対に急上昇しているのかについて語りたい。

その前に予備知識として、次を事を予備知識を講釈する。
塗料メーカは原油価格によって株価が大きく変動する。
原油価格が上がると塗料メーカの株価は下がり、原油安になると塗料メーカーはプラス指標になる。
つまり、塗料会社と原油価格とは天秤のような関係だ。

そして2020年4月20日コロナ恐慌を受け、人類史上初めて原油がマイナス相場(売る側が客へ金を払う状況)に陥った。
つまり、売り手が商品を引き取ってもらうために金を払うという事。
これは廃品回収と同じことで、石油がゴミになった歴史に残る瞬間だった。

しかし今回は平時ではなく、全世界同時に起こった大恐慌。
全ての素材系の取引が減収する予想になり、いくら原油が安くなっても塗料関連は売れないフェーズで当然株価は下がった。
ニッペ以外の他社はその方式に普通に当てはまり、現在も低迷を続けている。

しかし、ニッペだけが勝っている要因としては、4月初旬アメリカのIFISコンセンサスという、競馬や競輪でいうでいう「株式市場のコーチ屋」が原油安を背景に、「ニッペ行けるで!」と太鼓判を押したことと、4月10日と4月15日に大手銀行からの2千億円の資金調達(上昇指標で達成か?)が要因のようだ。
(その他の要因は別記事の下調べ時に発見!別の記事で詳細を掲載予定。)

しかも素材系のオールド・インダストリー内で株価が上がっている会社が少なく、また「株主価値の最大化」を謳うニッペに対して投資家たちが期待感を込めて注ぎ込んでいるからだろう。

そして先日の合流。
ニッペに何が起こっているのか分らないくらいガンガン攻めに攻めている。

不況のときこそ攻めるのはビジネスの鉄則だが、まるでニッペに松下幸之助が降り立ったかのような印象だ。

”不況またよし。
不況は改善、発展への好機である。
景気の悪い年はものを考えさせられる年。
だから、心の革新が行われ、将来の発展の基礎になる。”
松下幸之助(松下電器産業創業者)

今後のニッペは、田中正明会長兼社長とウットラムのゴー・ハップジン代表のタッグによって、国内塗料業界のみならずワールドワイドな塗料メーカのパワーバランスにも影響しそうな気配だ。

今回はコロナ恐慌に関する塗装業界の影響として、内外のGDPや主要塗料メーカーの株価、そしてニッペの躍進で現状を解説したが、次回は戸建の塗替業界で起こっている進行形のコロナ不況や、大規模とゼネコン系で起こったの過去とを振り返り、これから来るであろうリアリティに迫りたいと思う。

©︎PaintBiz By 二見勇治

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二見勇治

著者:二見勇治 Futami Yuji

建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。