ペイントビズ(PAINTBIZ)

塗装道具探求 皮スキメーカー Vol.1

金物の町と皮スキ

次にピックアップする地域は兵庫県三木市。
この地域は「三木金物」として有名な街だ。

技術交流から始まった
日本で最初の金物のまちと言われる三木市。
その起源は、今からおよそ1500年も昔、五世紀の中頃のこと。天目一箇命(あめのまひとつのみこと)を祖神とするこの地方の大和鍛冶と、百済の王子恵が丹生山へ亡命してきた時に連れてきた技術集団、韓鍛冶が技術を交流。すばらしい技術を持った韓鍛冶が三木に住み着いて、鍛冶を行ったのが始まりでした。
その後、鍛冶の発達とともに優れた技術を持つ大工職人を数多く輩出。平城京、平安朝の時代から国宝級の建物を手がけてきたのは、日原大工と呼ばれるこの地方の大工でした。
引用:三木市役所サイト

しかし、この土地は戦国時代、豊臣秀吉によって町全体が焼き討ちにあい、街のほとんどが壊滅した。
そこから戦後復興を遂げたのも、金物産業によるところだ。

最初に紹介するのは土牛産業株式会社。

社名:土牛産業 株式会社
ブランド名:DOGYU
住所:兵庫県三木市別所町巴38
創業:1908年(明治41年)

こちらの会社も建築関連の工具を多く製造している。

特に様々なアイデアを凝らした工具が多く、製品情報を見れば仕事へのイマジネーションが沸いてくるはずだ。

特にスレート屋根用の縁切り「エンカッター」には目を見張る。他にも便利な工具がラインナップしている。

この会社の特徴は、なんといっても企業情報の下部にある設備関係の項目が充実していることだ。
鋼材の加工機械から、樹脂関連の工作機械まで、これほど多くの設備を列挙している会社も珍しい。

このことから分かるように、多くの工程が自社加工で生産され、その結果として品質担保に繋がっているのではないだろうか?

 

次に紹介するのは、株式会社イトー。

社名:株式会社イトー
ブランド名:ビッグマン
住所:兵庫県三木市大村177-1
創業:1937年(昭和12年)

こちらの会社も工事関連の工具が多いが、メーカーとしての立ち居地よりも、商社としてのポジショニングに近い。
しかし、オリジナル企画の商品を販売し、単なる汎用品だけを売る会社とは一味違う。

オリジナルブランド「ビッグマン」の多くの商品はホームセンター経由で販売され、その中に皮スキがある。

また商社に近いと紹介したが、決して製造とかけ離れているのではなく、作り手との関係性が良好なのが伺える。

株式会社イトーが企画しているサイトにその一端が垣間見える。

東西鍛冶名匠録 匠の集い/日本の切れ味

このサイトはイトーのブランディングサイトになるが、兎に角カッコイイ。
刃物に対するこだわりが爆発している。

流石「金物の町」だからこそ、これだけの匠が集まるのだろう。しかし皮スキがないのは少し残念。

しかしビッグマンの皮スキでは、使用されている鋼材の表記が行われ、商品に対する品質への追求が感じられる。

《ビッグマン皮スキ仕様の一例》

材質:刃部ステンレスSUS420J2
硬度:HRC50°
ハンドル材質:PP
※SUS420J2は焼入れの出来るステンレス鋼。ステンレスの中では最も錆びやすいが高硬度に優れる。

ネット経由でも購入できるが、なぜかビッグマンの皮スキは「ヘラ」としての商品名になっている場合が多い。
検索するには注意が必要だ。「ビッグマン ヘラ」で検索しないと皮スキはヒットしない。

ここまでが兵庫県三木市の皮スキメーカーだ。

次も世界に名だたる金物の町、燕市と三条市の皮スキメーカーを紹介する。
だが、今回の記事はココまで。

次回、【塗装道具探求】皮スキメーカー第二弾で更なるメーカーを紹介したい。

©︎PaintBiz By 二見勇治

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二見勇治

著者:二見勇治 Futami Yuji

建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。