ペイントビズ(PAINTBIZ)

無垢の木部 あく洗いは塗装屋の腕の見せ所

木部あく洗い 株式会社ミヤキの動画紹介

注意!
本記事は建築塗装の事業者に向けた内容です。一般の方(DIYユーザー)への作業アドバイスではありません。
記事内には医薬用外劇物・医薬用外毒物の取り扱いが含まります。劇物を業務上使用する場合は「業務上取扱者」となりますが、一般の方(DIYユーザー)が個人利用として購入できない商品です。
万が一本記事を参考にし、ご紹介した商品を使用した際、事故や事件が発生しても、ペイントビズでは一切の責任や保証をいたしません。


冒頭から注意事項で恐縮だが、今回は木部の洗い、アク取りだ。

この記事はDIYユーザー向けではない。プロ向けの記事になる。

木部のアク洗いには、医薬用外劇物・医薬用外毒物に該当する製品がある。作業や取り扱いに関しては冒頭の注意書きのとおり。
製品の取扱説明書や注意書きを読み、意味を理解し、防護具を着用し十分注意しての作業が必須だ。

そもそも、塗装工事は危険と隣り合わせ。屋根に乗れば一歩間違えば墜落する。

2連ハシゴも使用方法をミスれば7mの高さから落下するし、工場の屋根も簡単に踏み抜け、真逆さまに落ちてしまう。
サンダーに指が触れれば、指は飛ぶし、狭い個室で強溶剤を換気しないで塗れば速攻ぶっ倒れる。
しかも倒れた後、他の作業者に気が付かれなければ死に至る。

筆者は塗装屋に生まれ、幼い頃から建築塗装に親しみ、恐ろしい事故も見てきた。
その中でも、特に注意を受けたのは「木部洗い」の薬品だ。

30年以上前の話で恐縮だが、十代の塗装工(筆者)に「あく洗い」の作業させた親方(父親)も、今考えれば「どうかしている」と思う…
玄関ドアや建具のアク抜き作業でのことだ。
※一般ユーザーを危険に巻き込まないため、上記作業の材料は意図的に伏せさせて頂く。

この作業は、常に危険と隣りあわせで仕事をしている人々が「特段注意を行い」扱う製品であり、業務上精神的な注意や集中の緩急を使いこなしている技術者達の作業だ。
平和な日常の、普通の人々が扱える製品ではない。

更にこの作業が嫌なペンキ屋は洗いのプロ、「洗い屋」さん(洗浄業者)へ業務委託することを推奨する。

今回、そんな前書きから始まる「木部あく洗い」の動画をご紹介。

タイトルは「木部あく洗い 株式会社ミヤキ」
株式会社ミヤキは業務用の洗浄剤、木部などの表面保護塗料を扱うメーカーだ。
(一部個人利用では購入できない商品があります。)

動画の仕様からも分るとおり、ハイビジョンではなく旧来のスタンダードサイズで映像には古さを感じるが、製品自体は今も現役。
それだけキャリアのある製品ということは、間違いなく実績のある商品だ。

映像から考えるに、90年代の映像のように思える。
足場による高所作業であってもヘルメットがかぶられていなかったり、薬剤を散布していても長袖を着用していないシーンもあるものの、現在の工事事情とは違う、「おおらかな時代」として考えたい。

この動画の中で、噴霧機を使っての作業もあるが、一部の製品では「飛散防止のため刷毛塗りを指定」している製品もあり、取り扱いには十分な注意が必要だ。
(刷毛も獣毛刷毛は化学反応で溶ける。「大塚刷毛アク洗用刷毛」などの対アルカリ薬品用刷毛を推奨。取扱説明書は必ず読み、使用方法厳守での作業。)

事前にすすぎ用の水道やホースを用意し、耐薬品用の手袋、防護メガネ、マスク、ヘルメットや帽子を装着。
万が一作業者側に薬剤が飛んだ場合でも、防御が行え、尚且つ洗い流すことができる準備で作業を行ってもらいたい。

乾燥後の研磨を行う場合は、集塵機の稼動とマスク(呼吸用保護具)による粉じん障害防止が必要だ。

また、動画内で洗浄機による、薬剤塗布後の木部地肌を洗い流しているシーンがあるが、水分や薬剤で柔らかくなった木部の素地へは、高圧洗浄をかけてしまうと、表面が削げ落ち、珍味の裂きイカのように、バサバサなってしまう。また、塗布した薬剤は飛散することも考えられる。
水流は緩く、優しく表面の薬剤だけを飛散させないように流すことが重要だ。

更に作業場所が道路に面している場合は、道路使用許可や警備員の配置など、他者への安全に対する配慮も必要だ。少し制約事項が多いが、そのくらいこの工事に関しては十分気を引き締め作業を行ってもらいたい。

木部あく洗いが終わった後、乾燥後の出来栄えに驚愕するほど、あく洗いは作業前と作業後の仕上がりは素晴らしく、施主が見たら間違いなく感動する。

そもそも、工事を行っている側が感動するくらいキレイになる。

次の作業として、表面保護材の塗布も重要だ。
施工部位や環境によって、様々な塗料が同社から販売されている。

塗料店へ相談すれば適材適所の塗料を選別してくれる。

今回は木部の「あく洗い」を取り上げた。
しかし洗う前に、剥離作業する場合もある。その際も剥離材の取り扱いには注意が必要だし、木部の肌を傷つけないような繊細な配慮が必要だ。

無垢の木部は塗装屋にとって腕の見せ所。
様々な難題を乗り越えれば、新築当時の美さが蘇る。是非とも表面保護と美観の回復に腕を揮って欲しい。

©︎PaintBiz By 二見勇治

二見勇治

著者:二見勇治 Futami Yuji

建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。