ペイントビズ(PAINTBIZ)

建築塗装 サビのメカニズム

異金属による腐食

前のページの動画、「錆と腐食と防食と② 錆を防ぐには/被覆防食/電気防食/耐食材料」でも解説されているが、「犠牲陽極作用による防食」の逆が現場ではよく見られる。

動画②の「犠牲陽極作用による防食」では「亜鉛が鉄よりもイオン化しやすい」と解説してあるとおり、2つの金属をくっつけると、腐食しやすい方が先にサビる特性を生かした防食方法だ。

しかし、建物は時間経過と共に様々な改修が施される場合が多く、鉄と亜鉛ではなく、鉄よりもサビ難い「ステンレス」が鉄と接することによって鉄部が腐食してしまう事がある。
これを「異種金属接触腐食」という。鉄と亜鉛では、亜鉛を先にサビさせることによって鉄を守るが、鉄がステンレスなどのサビにくい金属と接触すると、鉄の方が先に腐食してしまう。

下の写真はRC造のマンション、屋上へ上がるメンテナンス用のハシゴの例。
(アンテナ線も遊びが無く、躯体に雨水が侵入しそうだが。)

上の緑色の矢印、ステンレス製のハシゴ。

下の赤い矢印、ハシゴは鉄製だが、アンカーボルトとナットがステンレス製だ。
拡大写真は以下の通り。(動画からの切り出しのため不鮮明で申し訳ない)

見事にステンレスの周りが錆びている。

他にも様々なケースがあるので、例をピックアップしたい。

1、鉄部のバルコニーの手摺に、BSアンテナ設置。「ステンレス製のU字金具」で塗膜を崩し素地の金属に密着。

2、鉄部の門扉にステンレス製のドアノブや箱鍵が設置。

3、鉄部の格子に目隠し用のルーバーをステンレス製の金具で固定。

4、RCの集合住宅、交換したバルコニーの避難用ハッチがステンレス。交換の際、躯体の鉄筋と接触。

このように、鉄と異なる金属が密着してサビがひどいようなら、異種金属接触腐食を疑ってもよいだろう。

建物は経年が過ぎていくと、様々な改修が施される。
電気系の工事だったり、水道や設備関係の工事でも建物を劣化させてしまう場合がある。
彼等は悪気は無いのだが、腐食の事を知らない場合が多く、それが建築物を劣化させてしまっているケースもある。

最悪、ステンレスのアンカーボルトが鉄筋に接触し、そこから爆裂まで起きる事も珍しくない。

中でも電気系配線のシリコンの問題は、建築塗装の職人ならば誰でも一度は経験しているはずだ。
(電気屋さんの工事業者にシリコンを使わないでもらいたい!)

少し話がずれたが、今回は建物の金属のサビについて記事化した。

最近の塗料販売店は販売店側でも様々な情報を配信している。こういった情報を調べ、建築塗装をより知る事もペンキ屋にとって重要な時代ではないだろうか。

©︎PaintBiz By 二見勇治

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二見勇治

著者:二見勇治 Futami Yuji

建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。