ペイントビズ(PAINTBIZ)

Vol.1 建築塗装のYouTubeは今

世界的ペンキ屋ユーチューバー

先ずは、塗装系ユーチューバーとして恐らく累計最多の再生回数を誇るであろう、アメリカのPaint Life TV(以後:ペイント・ライフTV)を紹介する。

筆者が最初にこのチャンネルに出会ったのは、2014年の初旬頃だったと記憶している。
某戸建塗装系のコンサルより依頼された、塗装職人の新人教育用ビデオ制作の監修を行うために、ネットで様々な情報を収集していた時、このチャンネルをはじめて視聴した。

元のチャンネル名は「The Idaho Painter」(ザ・アイダ・ホペインター)で、最近「ペイント・ライフTV」に改名。
このチャンネルはクリス・ベリー(Chris Berry)氏という、塗装会社を経営している職人が運営している。
彼の風貌はマッチョでトライバルデザインのタトゥーが目を引く、ワイルドなペンキ屋のオヤジだ。
ワイルド・スピードやマッドマックスに出演していても違和感は無い。
(数年前までは大柄なトライバルタトゥーだったが、そこへ更に細かい墨を入れた刺青になっている。)

 

 

 

 

 

 

写真:Chris Berry(クリス・ベリー氏)Fecebookより引用

チャンネルの概要としては、彼の塗装技術や道具の紹介などの動画が多く、チャンネル登録者数は2020年現在で約35万人。
建築塗装というニッチ系のジャンルながら35万人のフォロワーは決して少なくない。
また、再生回数100万回以上の動画も多く、ペンキ屋発信の技術系ユーチューブチャンネルとしては、恐らく最多を誇るのではないだろうか。

再生回数が多い要因としては、世界の英語圏が約15億人といわれているため、ニッチな建築塗装というジャンルであっても再生回数を稼げている。
日本語オンリーの国内のみをターゲットとした発信力と比べると、その差は約10倍。
英語圏には数的な有利さがあり、現在の世界的なユーチューバー達の殆ども英語圏を対象としている。

内容を塗装に戻す。米国ではDIYによる塗装も多いが、職業としての塗装職人や塗装会社に住宅塗装を依頼する施主も少なくない。

因みに筆者は実家と親戚がペンキ屋だった関係で幼少期から塗装に馴染んでいたが、もっぱら技術系の仕事を教えてくれるのは、塗装職人の父親よりも歳の離れた従兄弟から教わった。
その従兄弟は、彼の姉が50年ほど前に米国オレゴン州ポートランドへ嫁いだ関係で度々オレゴンへ通い、その際に現地でも塗装職人も行っていた経験から、米国での塗装事情にも明るく仕事の合間に良く聞かされていた。
(筆者の従兄弟もPaintBizで取材予定)

筆者従兄弟曰く、米国には毛先の滑らかな繊細な刷毛は無く、腰袋に入っているような掃除用のラスター刷毛と同じ、しかもバサバサ。ローラーはハンドル自体が重く日本の大昔のローラー。それ以上にエアレスを多用した工事が多い。
(今は毛先の滑らかな刷毛も多少はある。)

日本で吹き付けといえば、コンプレッサー式か温風式(旧チノン現アバック)が多いが、米国では戸建の現場であってもダイヤフラム圧送式のエアレスがプロの塗装現場では常用されている。
国内でも大規模新築、大規模改装やテナント、倉庫や工場の屋根などの塗装を行う会社では、エアレスを使った工事は珍しくないが、戸建の塗装ではまだまだエアレスは主流にはなっていない。

そして米国では例えDIYであっても、材料屋(塗料店)で塗料を買うと無償でエアレスを貸してくれる材料屋も多いと聞く。
それだけ現在の米国では戸建塗装であっても、エアレスが無くてはならない道具になっているようだ。

また、エアレスが主流なのは「住宅事情的に近隣との距離が広いから」というわけではなく、効率を求めるアメリカ人ならではの事だろう。
実際国内でも、郊外であれば近隣住宅との距離を気にしないで工事できる地域もあるが、エアレスはあまり使われていない。

しかも最近のエアレスは旧製品に比べ、吹き出し角度や飛散は旧来とは比べ物にならないくらい性能が違う。
そういった部分をペイント・ライフTVでは数多く紹介している。
外壁だろうが室内だろうが、エアレスでガンガン塗装していくクリス氏は圧巻だ。

しかし、日本人特有の繊細な塗装と比べると、相当大味な技法は突っ込みどころも満載かもしれない。
そういったザックリとしたところも「アメリカン・・・」として受け取ってもよいが、実は馬鹿にできないところも多い。

写真:エアレスを使った作業風景ペイント・ライフTVより抜粋

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二見勇治

著者:二見勇治 Futami Yuji

建築塗装アナリスト
企画・取材・撮影・動画清作・ライティング・マーケティング 担当
東京都出身。建築塗装業の長男として生を受け、多くの職人達の中で育つ。塗装職人と造園職人の修行を積んだ後、カメラマンへ転身。出版社カメラマンを経て2001年よりフリーカメラマン。
雑誌・書籍・広告撮影、塗装関連の写真・動画制作、リフォーム会社広告担当を経験。
建築塗装の新たな表現を模索中。